何の説明もなく、御幸は入学当初からクリス先輩が好きという設定になっております。
御幸に乙女警報発令中です。
そしてコレが一番大事、 いつにもましてグダグダです。
欲しいものはサンタさんがくれる時期は、もう過ぎてしまった。
子供の頃は、というと今も子供だろと叩かれるかもしれないけれど。
少なくとも今はもう、無邪気な子供じゃない。
サンタクロースはいるかいないかと問われたら、いると答えるけれどそれは勿論トナカイの引くそりに乗って空を飛び、夜眠っている良い子のためにプレゼントを置いていってくれる人のことじゃない。
北欧のとある国に、本部を置く協会に属している体重120kg以上の生身の人間のことだ。
もう何の衒いもなく、不可思議なものを信じられなくなってしまった。
自分で手に入れられるもの以外はもう、諦めたのだ。
***
「あれ?クリス先輩、もう帰ってきたんですか?」
今日はどこにいっても、光るイルミネーションと二人一組の男女―――と、この間フラれたばかりのクラスメートが言っていたが要するにカップルだ、ばかりの日。
「カップルにあてられて帰ってきたとか?」
この先輩にかぎってそういうことはないとは思うが、それでもイベントにかける恋人達の情熱はものすごいものがある。
「いや、たまたまこの時間に講習が終わっただけだ」
うれしいような、うれしくないような返答だ。
「御幸」
そういえば、といったような顔。
キャッチャーって人種がこんな顔するときは大抵よからぬことを考えてるときだ。(もっとも倉持辺りには、その最たるものが言うなと言われたけどそんなものは無視無視)
「ほしいものはあるか?」
「それってクリスマスプレゼントってことですか?」
…訂正。よからぬことばかりもでないらしいが、なんにしろ心臓に悪いことだ。
「この時期こうやってお前と話すのも最後だろうからな」
最後、という言葉が重い。
わかっていたはずなのに、それでもやはり本人の口から聞くのは辛い。
それでもやっぱり、諦めるしかないんだろう。
「じゃあ、握手してください」
そんなことでいいのか?
いいんですよー、あ。でも左手でがいいです。
もしかしたら億に届くかもしれないほど、たくさんの球を受け止めてきた手。
最後に触れられるなら、それはいい思い出になるだろう。
首をかしげながらも、望みどおりに出された左手を前に、
頭の中で声がする。
諦められるのか?
手に入らない、そうやって思い込むだけでもう二度と欲しがらないといえるのか?
諦めきれるのか?
差し出されたままの左手を、震える両手で握り締める。
野球中心の生活から久しく離れてなお、肉の厚い手だった。
―――自分と同じように。
震えた声は、小さな子供よりよっぽど必死で。
それでも無様とは思わなかった。
やっぱり嫌です。
先輩が欲しい。
今、一番欲しいものをくれるっていうんなら、先輩を下さい。
背番号2をつけた先輩をみることも、
正捕手の座を先輩と争うことも、
先輩と一緒にプレーすることも、
みんな、みんな手に入りませんでした。
サンタクロースなんかどうでもいいです。
みんなに平等にもらえるプレゼントなんていらないです。
でも、もし…
先輩がサンタクロースの代わりにプレセントをくれるっていうなら、
どんなわがままでもいいなら、
先輩を下さい。
一方的に握り締めたいるだけだったその左手に力がこめられて、そっと引き寄せられる。
「他に、欲しいものはあるか?」
背中に回された手のひらを、どうしようもなく、温かく、愛しく思う。
「それから、最後って言わないで下さい」
すきです、と。
やっと言えた。
END .
くりみゆ。唐突すぎてすみません。
なんでか分からないけど、顔を真っ赤にした涙目の御幸が思い浮かんだので。
実は恋したらもんのすごい乙女なのではないかと思っております。
特にクリス先輩についてはもう、憧れの人というか追いかけるべき目標ってことでフィルターかかってると思います。
実はコレ、当初書こうとしていたクリスマスネタじゃない……アハハ
ワンパタに落ち着く自分に凹みます…
そしてクリス先輩は返事をしてあげてください。
081230