【Four seasons switch back】
Every time I close my eyes, I see you I feel you.
Everynight I get a little weak, you make me strong and hopeful.
I hope to do it and to be that for you, too.
「財前!!」
「財前さん!!」
覚えているのは、突っ込んできたランナーの必死な表情。コマ送りのようにゆっくりと変わっていくそのツラは思い出すほどに滑稽だった。そこから先は覚えていない。
気がついた時、俺は膝を抱えてその場に倒れており、キツく閉じた目蓋の裏に赤い光を見ながら、チームの奴らが俺の名を呼ぶのを聞いていた。
運ばれた病院で下された診断は、左ヒザ靱帯断裂。全治には気の遠くなるような日数がかかるといわれた。
医者の言葉を、俺も呼び出された親も、試合が終わってから駆けつけた監督も、誰一人受け入れられず、その場には奇妙な沈黙が生まれた。
「来年の夏には間に合いますか?」
こういう時、本人が1番早く現実に戻るっていうのは本当らしい。どんなに奇跡的な回復を遂げたとしても、今年の夏は勿論のこと、春さえも危ういかもしれない。だったら最初から来年の夏に照準を絞った方がいい。
後ろで大人二人が、言葉を何一つ発せないでいる中、俺は甲子園に立つ可能性を冷静に計算していた。
「努力次第です」
その言葉は、俺以外の人間にとっては死刑宣告にも等しかったのかもしれない。けれど俺にとっては、1つの希望だった。未来を自分で切り拓ける、他の何にも左右されないことと同義だったからだ。
それから俺はひとり、太陽の匂いのするグランドに背を向け、無機質な部屋の中でリハビリに打ち込んだ。
必ず戻ると、誓った。
もう一度あの場所に立ち、あの背番号を背負うと決めた。
弱音を吐かず、涙を見せず、そうあることが当たり前だったかのように。
それでも細く長い道を照らす光ははるかに遠く、時に暗闇に紛れてしまう。
そんな時、先の見えないリハビリに、時折全てを投げ出したくなる。
踏み留まるために、深く息を吐いて目を閉じると、現れる一つの影。
ったく、ダセェよな。
発狂しそうなほどの痛みを堪えるための唯一の歯止めが、マウンドでもバッターボックスでもなく。
目を閉じると現れるお前だなんて。
真冬の脆弱な太陽でさえ、その存在は瞬時に真夏の太陽へと繋がり、そしてそれに照らされたグラウンドとマウンドを思い出させる。
その、心の中に思い描いたマウンドの先には、必ずお前がいて。
マスクを被り、ミットを構えている。
そして気付いてしまうのだ。
陰になっていて見えないはずの、マスク越しの目が優しさに溢れていることに。
それはいつかの過去の映像であり、もしかしたら訪れるかもしれない未来の姿でもあった。
訪れてほしいと願っている、未来の姿だった。
気付いていても、悔しいから絶対に認めてはやらないけれど。
けれど、いつか。
END.
ごとうさん主催で開かれた祭りに別名義で投稿したもの。
なぜ別名義かといわれたら、その名前を使いたかったとしか…